================================================== 2000年代邦楽ベストディスク50 ================================================== このテキストは2008年5月初頭に友人らと盛り上がって 制作を開始し、しかし全員忙しくて結局出なかった音楽 ミニコミのために書かれたものです。今回、ハードディ スクを漁っていたら発掘されたので、勿体無いからここ に載せます。これがすべてではなく、友人らも50枚ずつ 選んでるのですが、それは載せられず。今現在の好みと は必ずしも一致しないのですが、まあそれはいいじゃん! 選出時のルールは以下のものでした。 ・2000年1月から2008年4月までに発売された作品のみ。 ・1アーティスト1枚。 ・どうしてもと言うならベスト盤もアリ。 ・シングルもアリ。 ・コンセプトがはっきりしてるならコンピもアリ。 ・アルバムの完成度を第一に考えなくていい。 ・客観性よりも自分の好み。 ・順番はテキトー。 ではスタート。 -------------------------------------------------- 01.サニーデイ・サービス『LOVE ALBUM』 インディーズ〜メジャーデビュー直後の「究極の渋谷系」 と呼ばれた時期の打ち込み路線に先祖返り&バージョン アップした印象。実際インディ時代のリメイクみたいな 曲も入ってる。トータルの完成度では『東京』『MUGEN』 の方が高いけども、究極の一曲「魔法」とアルバム一曲 目「イントロ」の美しい予兆は何度聴いても飽きない。 02.ゆらゆら帝国『ゆらゆら帝国III』 「ゆらゆら帝国で考え中」のサイケデリック&スピード フリークなロック感がすべてとも言えるが、アルバムは アルバムでいい曲がいっぱいの名盤。本作が出た当時、 『ROCKIN'ON JAPAN』がDragon Ashを表紙にしているの を見て、ああこの雑誌はダメだなと思った記憶が甦って きた。基本ハズレなしで完成度では『Sweet Spot』かな。 03.ピチカート・ファイヴ『さ・え・らジャポン』 『ハッピー・エンド・オブ・ザ・ワールド』以降の停滞 を打ち破った会心の作。発表直後に解散したのも当然と いうか、続けてもこれ以上のアルバムを作ることは出来 なかったでしょう。ポケモンのカバーは海外ウケを狙い すぎだけど、過去に習って(倣って)現在を生む、日本 の大衆音楽の伝統と歴史がこの作品に凝縮されている。 04.竹村延和『ソングブック』 『こどもと魔法』もショックな内容だったけど、こっち もワンダー。誰にも似てない音楽を作るのが可能かどう か。その問いには竹村延和をもってイエスと答えたい。 コード進行とメロディと音色とアレンジが他の誰とも違 う構造と強さを持っている。関係ないけどスピリチュア ル・ヴァイブスでは「pupa」という曲が好きでした。 05.Hidenobu Ito『First Love』 宇羅々ヒカル名義でドイツでも高い評価を受けてるヒデ ノブ・イトウ。初めて聴いた時は、あまりのギターのズ ッタズタ度にコーネリアスを思いだした。編集されまく ってて、でもナマっぽくて、ちゃんと踊れる電子な音楽。 うーん最高。最近出た『10 Girl's Voice』にも参加し てるけど、そちらはコンピ自体が普通といいますか……。 06.Tsuki No Wa『Ninth Elegy』 とても屋根の高い建物の中で、ピアノ・ベース・ボーカ ル等の音色を空間一杯に響かせ、実音と反響音を同等に 扱うことで得られた独特のサウンドが特徴的な、Amepho neプロデュースによるツキノワのファースト。交じり合 う音にのるフミノスケの中性的なボーカルは、短編映画 のサウンドトラックのように穏やか。これ以降はやや普 通。 07.棗『マラケシの花』 ツキノワとどっちを入れるか迷ってどっちも入れること にした。どの曲も雑踏に立つ吟遊詩人のようですが、特 にタイトル曲は、誰も行ったことのない国の民俗音楽が エレクトロニカを経て現代に甦った!これを聴いたら旅 に出るしかない!いやもう出てる!という物凄い内容で す。ゲダリア・タザルテスと少し似てるかもしれない。 08.宮崎貴士『少太陽』 昔から活動しているそうですが、単独作品はこれが最初。 宣伝文句に「ポール・マッカートニーのポップセンス〜」 とあって、ポールが苦手な自分は敬遠してたのだけど、 いざ聴いたら素晴らしくてビビった。たしかにポールっ ぽいかもと思う部分はあるものの、空想上のオモチャの 王国に連れてかれるようなミラクル。国歌は童謡。 09.V.A.『So Far Songs』 場の隙間を埋め尽くす絶叫や轟音が飽和してきた頃、メ ロディと隙間を持つ歌への回帰現象?として「うたもの」 が90年代後半から流行。本作はそうしたミュージシャン 達を集めた名コンピ。渚にて、フリーボ、田中亜矢、ふ ちがみとふなと、羅針盤……。このワンクッションがあ ったせいで関西ゼロ世代の面白さが際立った気がする。 10.Spangle Call Lilli Line『nano』 スパングル・コール・リリ・ラインの全作品の中で、心 に残ったのはただ一曲「nano」だけ……。というくらい この曲にハマってしまった経験があり、というか「nano」 みたいな曲をもっと聴きたいと思って、3日で全CDを集 めたら「nano」みたいな曲は「nano」しかなかった、と いう結論にたどり着いてしまった、あの2002年の春。 11.原田郁子『たのしそう かなしそう』 クラムボンに対しては「クラムボン?ああ、いわゆる良 質なポップスの系譜に位置づけられるバンドですよね」 とテキトーにやり過ごしていたけども、ソロ第一作目の この曲はもうどうなんでしょう最高じゃないでしょうか。 原田郁子の声質とオオヤユウスケの作る楽曲が見事にマ ッチ。でもohanaは無難。奇跡は二回起こらない模様。 12.コーネリアス『Point』 過剰なポップさが目立った前作『ファンタズマ』が結果 的に90年代の集大成になったのに対して、本作の隙間を 意識した音の作り方は00年代っぽい。音数の少なさは海 外でのライブのやりやすさを優先させた過程の産物だろ うけど、アシッドジャズとかハードロックとか、判りや すいキーワードを持ち出すのをやめたのが良かったかも。 13.Asana『Ini Apa?』 Asanaの民族音楽ミーツ・エレクトロニカみたいな叙情 感溢れる音は好きなタイプなのだけども、いろんな人に リミックスされたこのアルバムの、特に「Across The R iver」のトラックの異常な出来の良さはオリジナルを凌 駕してるよなー。タナカ・アキラとのスプリット盤もよ く聴いてます。こんな曲ばっかり聴きたいなあ。 14.トクマルシューゴ『L.S.T.』 1stとどっちでもいい。ギターをはじめとする自作自演 楽器の多重録音で作られているらしい、柔らかい音色と 独特の音響がもう美しすぎて素晴らしすぎて……。声と ギターの境界がない、残響に溶け合って消えていく空間。 トクマルシューゴさえいれば音楽はしばらく安心だ。ラ イブの弾き語りも最高。3枚目とゲラーズはそれほどで も。 15.win a sheep free『small rainbow meets rain drops』 電子音ではなくアコースティックでミニマル・ミュージ ックを奏でたらどうなるか、さらに美しい歌とメロディ を合わせたら……。活動停止してしまったのが本当にMO TTAINAI、ウィン・ア・シープ・フリーの唯一のアルバ ム。究極のエヴァーグリーン・ポップス。スパングル・ コール・リリ・ラインが好きな人なら絶対ハマる。 16.Haco『Riska』 元アフターディナーとかいちいち書くのも面倒くさいハ コのソロ。ここ数年は割と実験音楽っぽい、物音系っぽ いのがメインだと思って敬遠していましたが、このアル バムはいきなり別格すぎる。一度面白いと思ったら継続 して追わないとダメですな。1曲目「プルシャ」の木琴 と声の重なりにうっとり。カラフルな眠りに誘われます。 17.志人『Heaven's 恋文』 今のところ好きになれない降神(ライブが良いらしい) だけど、このソロCDは気が付くと何度も何度も聴いてい る。降神と何が違うんだと言われれば返答に困るが、た またまバックトラックの音が好きなのと、変な台詞のコ ラージュが挟まるとこと、4曲目のエフェクト効きまく ったアカペラパートのメロウさが主な勝因でしょうか。 18.the pitchshifters『parity*indicate』 何を聴いても何かを思いだす現代に登場した、思いだす 前に連れて行く電子音楽家、ピッチシフターズの編集盤 その1。一度だけ観たライブは映像と音を融合させた五 次元ショーという感じで非常に良かったですが、CDも負 けず劣らずいいですよね。シンセの音色が流れ出した瞬 間の、耳が拡がるような感覚を何度も味わいたい人向け。 19.Plus-tech Squeeze Box『Cartooom!』 フリッパーズの1stと2ndをバージョンアップさせようと するアフター渋谷系なバンドが多い中、3rdの過剰さを 追求して、実際に過剰になった感を出せたのはこの人達 くらいではないでしょうか。技術の進化によって可能に なった感のあるサンプリング&エディットの洪水。VROO Mは非常にアフター90年代っぽいレーベルですよね。 20.YMCK『Family Music』 ファミコンみたいなピコピコ8bit音でソフトなジャズを 繰り広げるポップユニット。チープでキュートなサウン ドは一種のオリジナリティといえるものでありつつ、欠 点は飽きが来た時の対処法に困ることではないでしょう か。音を足しすぎるとチープ感が出ないし、でも同じの 作り続けても退屈だし。今後この1stを超えたら凄い。 21.サンガツ『静かな生活』 サンガツは後追いなのですが、1stを発表当時に聴いた らすごい衝撃だっただろうなあと今更ながらに考える、 日本を代表するポスト・ロック・バンドの三枚目。ギタ ーとドラムがフィードバックして、どんな人の心にも忍 び込む優しく静かな音響。こんなに映像的な音も珍しい 気がする。しかも場面は違っても必ず曇り空。多分。 22.Aya Collette & The Setouchi Authentics『The Classical Album of Collette』 アヤ・コレットはやっぱりこのミニ・アルバムが一番い いと思う。というより一曲目「宣言」のトータル・アレ ンジが究極&絶品で、他のどの曲のどんなバージョンを 聴いてもこれを超える衝撃は受けません。このアルバム は2005年にCD-Rで出回り、一時期はリリース予定があっ たようですが続報なし。しばらくお蔵入りなのかしら。 23.花のように『夜行列車』 まさにバンド名のような音楽を奏でるアシッド・フォー ク・バンドの二枚目のCD-R。特にアシッド・フォークを 意識しているわけではないと思うけども、出てくる音の 印象は叙情派サイケデリック。ギターはゆらゆらと揺れ て、歌声が儚くて、いつ聴いても背筋が寒くなる。PSF のコンピにも入ったのにアルバム出す前に活動休止!が ーん。 24.くるり『TEAM ROCK』 くるりは日本ポップス史に残る大名曲「ばらの花」を残 していて、そしてああいう曲は一生に一度しか書けない と思うので、となると残された可能性は曲のパターンの バリエーションを増やすことで、そこから抜け出すため に自己模倣を繰り返し続けることになる前の最後のアル バムが多分これ。レイ・ハラカミのリミックスも好き。 25.TEASI『人間の裸』 音数の過剰さがなく、反響音で隙間が埋まることもなく、 音の一つ一つが途切れてくっきりしていて、静かに過激。 音を鳴らさない瞬間が、音が鳴っている間と同等に扱わ れているといえばいいのか。歌声がとても気持ちいい。 ポストロックを変拍子とか現代のプログレだと決め付け てる人はこのアルバムを聴くと考えが変わるのでは。 26.V.A.『Electronic Dynamic vol.1』 現在の状況というのは元を辿ればここから始まっている のかなと思った。ゼロ・グラヴィティのその後の、もう ポストを何度付ければいいのか判らないテクノ/エレク トロニカの、ダンス・ビートの熱とシンセサイザー・ミ ュージックが持つ独特のキラキラ感が混じりあった、今 一番求められてるエッセンスのいいトコ取り前夜! 27.イルリメ『イルリメ・ア・ゴー・ゴー』 『Quex』が傑作すぎたせいでその後何をすればいいのか 模索していたと思われる迷走を感じさせた時期を過ぎて、 求道的すぎるヒップホップとは相反する突き抜けた開放 感があまりにも感動的なパーティーアルバム。もう今の 世代に90年代のスチャダラパー(が担っていたオモロラ ップ的なヒップホップ)は必要ないのだと思ったよ。 28.DE DE MOUSE『tide of stars』 ロマンティックでセンチメンタルでキラキラなエレクト ロニック・ミュージックを奏でる銀河からの使者・デデ マウス。あとあと「00年代の音楽といえば」と聞かれた 時に思い出す音楽ベスト5がこれっぽいなと勝手に思っ てますが、しかし何なんでしょうね今こういう音楽に反 応してしまうというのは。無意識に閉塞してたから? 29.Perfume『Complete Best』 アイドルが虚構だと広く知れ渡ってしまった時代ゆえに アイドルを追う人々は日々奇形化してますが、パフュー ムは「プロデュース」の名の下に人形化する女子達の精 一杯の抵抗という古臭いアイドルらしさから抜け出し 「芸能界」センスを抹消した珍しい存在でした。『GAME』 の方が音は好きだけど、別に音だけ求めてるわけではな い。 30.Radicalfashion『Odori』 ピアノをフィーチャーしたエレクトロニカといえば高木 正勝を連想しますが、ラジカルファッションはそれに劣 らない音響を生み出す才人です。カール・ストーンとや ってる3曲目の「Thousand」なんて、オヴァルの『94 Di skont』やフィリップ・ジェックの『LOOPHOLES』にひけ を取らないと思うんだけどなー。それは褒めすぎか? 31.Polaris『Home』 ポラリスはディスクユニオンで「Slow Motion」が流れ てるのを聴いて初めて知って、たゆたうメロディと雰囲 気に思いっきり惹かれてしまった経験があり、選ぶなら 1stという刷り込みがある。彼らは最初から音楽性が完 成されすぎてて以降ほとんど変化がないので、どのアル バムも同じように聴こえる瞬間があるのだけども。 32.ダカダバダン『ダカダバダン』 1曲目「デラウェア」のイントロをたまたま試聴して、 ジャーマンロックっぽいギターのリフに脳みそクラクラ 私負けましたワと速攻で買いにいった日を思いだす。な のでどういうバンドなのか全然知らなかったのだが、サ イトには田口史人推薦文が載ってて納得。ライブの方が かっこいいんだろうと想像しつつ、まだライブは未見。 33.ZOFFI『ZOFFI』 DaLaiRanDomのメンバーで、大阪日本橋で活動していた ゾッフィーの唯一のアルバム。本人は2000年に自殺、友 人達が集まって自主制作で800枚だけ作った追悼盤が本 作だそう。こんなに透明なブレイクビーツは他に聴いた ことがない。音が透き通ってるって意味が判らないだろ うけど聴けば判る。音源が後世に残ってよかった。 34.タラチネ『タラチネ』 竹村延和・ミーツ・クラムボン的雰囲気が全編を覆う曲 の構造は好き嫌いが分かれるかもしれないが、人間を嫌 ってロボットに行ってしまった竹村にちょっとピンと来 なくなった人達にお薦めしたい、安心できるポップな佳 作。多分それなりの作品を作り続けることが出来てしま うバンドなので、マンネリになる前に聴いておくべき。 35.COMA*『Ondee』 AOR・ミーツ・ポストロックというか、不安材料が何も ない、デザインされた音の作り方にAORっぽさを感じる インスト中心のポストロック・バンド、コーマの3rd。 渋谷HMVの隠れロングセラー・バンドらしく、試聴機に 長々と入ってるので気になって聴いて確かに買っちゃう ワとご購入。神奈川県のカフェとかの店内BGMで流れて そう。 36.□□□『朝の光』 近作はますますヒップホップ色が増しているブレイクビ ーツ・ユニット?□□□のシングル。アルバムは1stが 一番バランスがよくて、以降は渋谷系っぽさが気になっ てしまう。このシングルはどこか小沢健二とサニーデイ を足して二で割ったような匂いもしつつ、メロディが気 持ちよくて爽快感があって好き。カップリングもグー。 37.川本真琴『微熱』 このシングルを聴いた時は本当に興奮して、こんな完成 度の高いポップスを作るなんて絶対アルバムも凄いに違 いないと期待していたのだが、アルバムはまとまりがな く難点が目立った。しかし本作のコーラスアレンジや音 色の仕上がり、またカップリング「月の缶」(アルバム は別Ver.)の複雑で美しい構成は聴いておくべきである。 38.RUBYORLA『samplin somethin』 ルビオラの1stソロ。ソロだけど副題に「コンピレーシ ョン・アルバム」とあるように、曲ごとに傾向がバラバ ラで、これをまとまりがないというかバラエティ豊かと いうかは聴く人次第。センチメンタルな「コエノ記憶re cord」を聴くと毎回泣きそうになる。プロフィールを読 んで実は活動歴が結構長いことを知ってビックリした。 39.小沢健二『毎日の環境学』 小沢健二はソロになってからずっと、ソウル/ファンク の本質を自分で掴もうとしていた。和製ソウルを経由し、 結局は黒人が一番とばかりに海外録音にこだわり始めた のが前作『Eclectic』だとすれば、どうしてもホンモノ に成りきれない弱点が自分の声だと気づき、それを消去 して残ったのが人工的箱庭音楽の本作だったのだと思う。 40.V.A.『Improvised Music from Japan』 日本の即興音楽家の情報を集めたサイトが開設5周年を 記念してリリースした10枚組ボックス。音楽を建築的に 捉え、構築美や譜面的完成度を求めていた自分にとって、 即興演奏は長らくオマケ的な存在だったが、プロセスの 開示や、作曲と演奏のタイムラグをゼロにする意味を考 えはじめた時、こういうのは教科書的に便利だった。 41.浅野達彦『GENNY HANIVER』 ゲーム「巨人のドシン」のサウンドトラックで馴染み深 い人もいると思われる浅野達彦のソロ・アルバム。1996 年に出たシングル『bonjour』をアレック・エンパイア が偶然?購入、自身のレーベルに誘ったものの、制作に 五年もかかって出たのが2001年になったという超マイペ ース。浮遊感溢れるアコースティックなエレクトロニカ。 42.想い出波止場『大阪・ラ』 2004年の久々のリリース作。実は最初はあまり期待して いなかった。『金星』『VUOY』が素晴らしすぎたので、 もうあれを超えるものは作れないと勝手に思っていたか らだ。羅針盤が好きでなかったせいもある。しかし本作 はまたもや、本当に素晴らしいアルバムで、乱反射する 音の一つ一つが美しかった。ROVOより波止場が好きだー。 43.Rei Harakami『red curb』 レイ・ハラカミの音の記名性は病的というか、とにかく 一秒聴いただけでレイ・ハラカミの曲だと判る特徴的な 音色である。別にどのアルバムでもいいけど、ちょうど この前後にエレクトロニカの世代が更新された感じがす る。名作。『Lust』に収録された細野晴臣のカバー曲は、 普段歌わない人が歌った時だけにかかる魔法ですね。 44.henrytennis『LIVE032105LIVE』 ヘンリーテニスは東京で活動している変拍子インスト系 のポスト・ロック/ネオ・プログレッシヴ・バンド。ラ イヴを観て好きになったが、cinraから出てるアルバム は音が全然良くなくてガッカリ。このCD-Rはライヴ一発 撮りみたいな、お世辞にも綺麗とは言えない音質だけど、 ライヴで感じたダイナミックな印象が出てて断然いい。 45.cherryboy function『something electronic』 権田山一雄とか名義は複数持ってるDJ/トラックメーカ ー。デデマウスがバカ売れのExT Recordingsの第二弾ア ーティストとして一気にメジャーに。今のところ聴いた 中で飛ばしたくなる曲が一つもない。ということはもし かして凄いってことだ。キラキラしつつボトムはくっき り、というのが2007年の流行だったのかなーとか。 46.ふちがみとふなと『HAPPY SET』 実はキャリアが長いふちがみとふなとはヴォーカルとウ ッドベースの二人組ユニット。たまねぎを剥いて剥いて 剥きまくって最後の一切れを剥いた後の、ぽかんと空い た空間のような音楽で、つまり心細く力強く異常に良い のだが、派手な展開を期待する人にはまったく薦められ ない。「うた」という言葉がいつになくしっくりきます。 47.Crane『Crane』 ローファイ+胸キュンの組み合わせで敵無しだったシト ラスに、後から加わった方のメンバー2人によるユニッ ト、クレインの唯一のシングル。シトラス後期のキラキ ラディスコサウンドの美味しいトコ取りというかメジャ ー感のある完成度の高さが素晴らしく美しく、なぜこれ がもっと話題にならなかったのか未だに不可解です。 48.yoga'n'ants『Bethlehem, We are on our own』 元シトラスの江森丈晃がエンジニア/プロデューサーの 渡辺正人と組んだユニット、ヨーガンアンツの1stアル バム。「あらゆる音楽的要素を吸収した」ような音楽は 既にこの世にいくらでもありますが、しかし「あらゆる 音楽好きに薦められる」という点を重視するなら、本作 以上に効果的な一枚は現時点で想像がつきません。 49.V.A.『White Album』 日本でちょっとアンダーグラウンドなエレクトロ・レー ベルといえばSWCですが、そのSWCが2007年末に出した名 コンピ。YAKENOHARA、Cherryboy、DE DE MOUSEを目当て で買って、気になったのはHarley & QuinとPepe Califo rnia。というかどれも恐ろしく良い。つまり2008年もエ レクトロは深化/進化する予定ということです。 50.group_inou『FAN』 group_inouは声が好きになれなくて自分から積極的には 聴かなかったのだけども、皆に「なんで嫌いなの?意味 不明」と総攻撃を受けて何度か聴いた。しかしやはり声 が……。と悶々としながらCD屋で新作聞いたら前ほど気 にならなかった。というかヤバイ、名盤だ!と焦る。し かし前作は相変わらず好きになれないのだった。なんで だろ。