『ネットランナー』2005年12月号「2005年の常習者サイト!」初稿

この原稿は初稿です。校正されたものが雑誌に掲載されています。

プロフィール

ばるぼら…… ネットワーカー。こんにゃくゼリー中毒。家のコンロが壊れて困っている。著書に『教科書には載らないニッポンのインターネットの歴史教科書』(翔泳社)、責任編集に『ユリイカ別冊オタクVSサブカル!』(青土社)など。最近はiTMSやウェブアニメーションについてごにょごにょ。渋谷系や子供も。2006年のインターネットは音楽が流行る予定。あと「お〜いお茶」も腐らせる予定。

選評

【2ch】ニュー速VIPブログ(`・ω・´)
http://blog.livedoor.jp/insidears/

2005年のニッポンのインターネットで一番メジャー感のある盛り上がりを見せたのが、2ちゃんねるのニュース速報VIP板である、というのに違和感を覚えるネットランナー読者はそういないと思う。VIPPER達の「ワロスwww」「キタコレ!」といった独特の語尾に見覚えのある方も多いだろう。大賞となった「【2ch】ニュー速VIPブログ(`・ω・´)」はそのVIP板スレッドのまとめサイト。掲示板編集型サイトは昔から存在するが、2ちゃんねるVIP板のスレッドのみを対象にしたサイトの増加は2005年特有の現象だ。純粋にネタを楽しむことを知っている、コミュニケーションに偏りすぎないコンテンツがインターネットに増えていくのは嬉しい。ただ、例えば今後、サイトの配色やレイアウト、画像の展開に文章の強調、管理人の色を徹底的に消すか、または一言コメントを付記して前面に出すか……そういった細かな部分でサイト運営に独自色を出していく流れになるかもしれないけども、実際はそこはどうでもよくて、あくまでネタ選出時の管理人のセンスが重要だという事は強調しておきたい。ふと「スレの杜」の時代を思いだした。

神爆笑.com
http://kamibakusho.com/

2005年のインターネットらしいサイトだと思うのは、例えば神爆笑.comのようなサイトだ。ブログ流行以降の「画像や動画を紹介するのは当り前」という認識、とにかく「笑えるネタ」を第一に追求した方向性、多くのリンクをトップページに配するスタイル……。これらの要素を複合して、広範囲に大衆的なセンスを加えた結果、「ザイーガ」ほどキッチュでなく、「X51.ORG」より限定的でもない、インターネットのコアユーザよりもライトユーザに素直に受け入れられそうな、意外と珍しい立ち位置を獲得したサイトになっていると思う。動画、画像、漫画、フラッシュ、体験談、テキスト、ジョーク、ゲーム、GIF、ニュース……あらゆる笑いの需要に応えようとしたコンテンツの量が頼もしい。mixiや2ちゃんねるの影響からか、一昔前よりもインターネットにつないでいる“一般人”の姿をよく見かけるが、彼らのためのコンテンツがウェブには未だに足りていない。神爆笑.comの役目はそういう隙間を埋めるためにあるのではないだろうか? ニッチというには巨大なコンテンツ需要が、まだインターネットには残っている。

ARTIFACT ―人工事実―
http://artifact-jp.com/

1997年開設という古株ながら、現在もなおニッポンの個人サイトの第一線で活躍し、ウェブでの活動に情熱を失っていない稀有なサイト。テキストサイト→メーリングリスト→ウェブログと、時期によって運営スタイルが異なるが、一貫しているのは、単純なオタクサイトではなく、オタク「分析」サイトであること。これがARTIFACTの間口の広さの秘密であり、当該サイトの面白さは、記事になったネタそのものよりも、管理人・加野瀬氏の徹底して相手を対象化する分析方法にある。これだけ長くサイトを運営していれば、大半の出来事は既にパターンで認識できてしまうのではないかと思うが、それでも新しい物事への興味を持ち続けられるのは、事物の蓄積が独特の着眼点を強化させる事を知っているせいだろうか。最近、本サイトよりも別館「ARTIFACT@ハテナ系」の更新の方が頻繁になっているのは、よりダイレクトに、よりスピーディーに分析するための一種のトレーニングのようなものなのかも。加野瀬氏が個人サイトを題材に、人間の思考・行動パターンをまとめてマーケティング本を書けば売れそうな気がする。

秒刊画像ファイルナビゲーター
http://byonabi.haru.gs/ma2/

秒刊画像ファイルナビゲーターを見ると、もうインターネットでは文章だけのコンテンツはあまり必要とされておらず、画像とか動画とか、一瞥しただけで面白いと判るものが好まれていくのかと思う事がある。もちろんそれがダメだと言うわけではなく、むしろ、インターネットは情報だけでいいと言っていた頭の固い人達が顔をしかめるような、くだらなくてバカバカしい事物がインターネットを侵食していくのだと考えるとなんとも心地が良い。「多くの人にとって無駄なもの」が省かれない事こそがインターネットというメディアの本質だし、ウェブを便利な機能としか考えないなんて心に余裕が無さすぎる。当該サイトはFlash系ニュースサイト「秒刊SUNDAY」が設置している、ジャンルごとに設置されている画像投稿掲示板。コミュニケーションに向いた掲示板は他にいくつも存在するのを知っているようで、ここではもっとネタ志向、「pya!」や「ふたば☆ちゃんねる」のように、画像を貼り付ける行為に焦点が当たっているが、サムネイルの見せ方に細かい工夫が見られる。ブログが廃れてもこうした掲示板は在り続けるはず。

Weekly Teinou 蜂 Woman
http://homepage3.nifty.com/wtbw/

海外を中心にした画像ネタ路線のウェブログではパイオニア的存在。拾ってくる記事も楽しいのだが、それを活かす管理人・土屋遊さんの奇天烈な文章こそが面白いのだと思う。

カトゆー家断絶
http://www6.ocn.ne.jp/~katoyuu/

誰もが驚く膨大な数のニュース記事リンクで、安定した人気を保っている。一体どうやって更新してるのか知りたくて仕方ない人が、ワタシ以外にも相当いるのではなかろうか。

かーずSP
http://hw001.gate01.com/karzu/

Flash系ニュースサイトの中では老舗の域に入っており、取り上げるネタのバランスの良さが絶妙。かーずSPのおかげで同人ソフト「ひぐらしのなく頃に」の面白さを知りました。

X51.ORG
http://www.x51.org/

オカルトや超常現象などのネタ選出センスもさることながら、面白ければ記事翻訳もアリだよねと思わせたこのサイトが、インターネットに果たした役割は実は大きい気がする。

朝目新聞
http://www.ne.jp/asahi/asame/shinbun/

ネタ画像をはじめ、主に文字以外の情報を収集して紹介する、ブロードバンド時代ならではの面白さを追求する姿勢が愉しい。ワタシが漫画やアニメにもっと詳しければ……。

あんりみてっど
http://unlimi.net/

ニュー速VIP板まとめ系サイトの一つとして有名。批判や一時閉鎖などの騒動を乗り越え、今は落ち着いた模様。閲覧者側としては末永く安定した運営をお願いしたいところ。

ダンシング★カンパニヰ
http://dancom.jp/

日記/テキストサイトは内輪化しすぎた印象が強く、普段はもうほとんど見ていない……と思ってる人にこそ絵日記サイトは薦めたい。ダンカンから始めてみるのがいいかもね。

絵文録ことのは
http://kotonoha.main.jp/

ブログ解説記事などで一躍有名になったウェブログだが、ネットの揉め事についつい首を突っ込む管理人・松永氏のやんちゃなキャラクターが、実はこのサイトの一番の肝では?

pya!
http://pya.cc/

萌えCG情報サイトはそれ以前にもあったが、個人ニュースサイトが笑える画像を積極的に扱い始めたのは、pya!が画像投稿掲示板になってからの印象がある。安定した面白さ。

ふたば☆ちゃんねる
http://www.2chan.net/

2ちゃんねるクローンでしかない掲示板が多い中、独創的なネタ職人が集まるふたば☆ちゃんねるのクオリティを見るたび、掲示板サイトにはまだ可能性が残っていると感じる。

がんばれ、生協の白石さん!
http://shiraishi.seesaa.net/

書籍化されるほど人気に火がついたのは「Weekly Teinou 蜂 Woman」が定期的に取り上げた事が直接のきっかけだったと思うが、謎は謎のままだった方がネットらしかったかも?

審査員賞

ウェブログのおかげでCSSがようやく大衆レベルで広まり、RSSリーダのおかげでウェブサービスの便利さが伝わった。AjaxのおかげでJavaScriptが見直されて、iPodのおかげでネットラジオが身近になった。VIPPERのおかげで掲示板の魅力が再発見され、のまネコのおかげでFlashの認知度も更に上がった。それでも、今年は自分の中でインターネットは停滞していた。なんせ一番見たサイトはmixiの自分の日記だ。理由は一昨年のブログブーム辺りから、ずっと同じような事例が周りを漂っている気分だったから。フォトログ、SNS、SBM……名前は何でもいいけれど、新しそうな技術ネタをいち早く日本に輸入してお金に換える競争が、去年辺りから本格化しているように見えて、それがあまり好きではない。インターネットで何かをやる動機は面白さであって欲しい、と思ってしまう自分は甘いんだろうか。新しくなくても面白い、当り前のサイトを選んだつもり。

今日のどるちゃん情報
http://d.hatena.ne.jp/doller/

アヴァンポップな漫画家、どるしょっく竹下氏の日記。物事を直感的に読み取る能力を持っていて、更にそれを説明するのが上手いのに、その能力を普段はどうでもいいコトに使ってそうなのが読み取れて素敵。ぷっぷくぷ。

モヒカン族
http://mohican.g.hatena.ne.jp/

馴れ合いや気遣いが跋扈するウェブに「NO!」と叫んだ集団が(メタ)モヒカン族。インターネットの本当にごく一部の出来事でしかないのに、『現代用語の基礎知識2006』に収録されてしまった事態が一番面白いかも。

放置新聞
http://d.hatena.ne.jp/m4n4/

フリーライター、まな氏の日記。文化に対する嗅覚が特徴的で、時事、書籍、音楽など特定のジャンルに偏らず、わりと淡々と更新している。...

Culture Vulture
http://d.hatena.ne.jp/d-sakamata/

フリーライター、近藤正高氏の日記。更新頻度は高くないが、サブカルチャー的事象に対する見解の鋭さは折り紙付で、読み応えは抜群。コミケでたまたま買ったミニコミに氏の文章が載っていた時はちょっと驚いた。

雨宮まみの「弟よ!」
http://d.hatena.ne.jp/mamiamamiya/

女性AVライター、雨宮まみ氏の日記。自らの女性観・男性観への強い信念を覗わせ、切れ味のいい文章によるレビューが爽快。「弟よ」と読者に語りかけているような文体も印象的。...


blogdexjp@hotmail.com
最終更新日:2005年11月30日