ネット上の文章の盗用問題:『新・UFO入門 日本人は、なぜUFOを見なくなったのか』(唐沢俊一著)を巡って

今回の概要

「漫棚通信ブログ版」という新旧問わず漫画の関連情報を紹介するブログがあります。その「漫棚通信〜」で公開している「山川惣治と空飛ぶ円盤」というエピソード解説記事とほぼ同内容の酷似する文章が、2007年5月に幻冬舎新書で出た唐沢俊一氏の『新・UFO入門 日本人は、なぜUFOを見なくなったのか』(以下『新・UFO入門』)という書籍に載っている件について、盗作疑惑が生じています。以下に比較検討のため両者の文章を並べます。

漫棚通信の文章 『新・UFO入門』の文章

 この本に、、山川惣治の手記が掲載されています。

わたしが始めて(ママ)空飛ぶ円盤と呼ばれている宇宙船を見たのは、昭和三六年の六月である。

 山川惣治はもともと円盤に興味があり、実在を確信して「少年エース」という作品内に円盤を登場させたところ、CBA(宇宙友好協会 Cosmic Brotherhood Association)から接触があり、彼らからテレパシー・コンタクト、略してテレコンをすすめられたという経緯。テレコンとは、頭の中で円盤を呼んでいると、それに答えて空飛ぶ円盤が飛来するというものだそうです。

 まず山川夫人が風呂上りに自宅屋上でテレコンをしてみると、円盤がやって来ます。家族みんなが屋上へ駆け上ってみると、もういない。山川惣治だけ仕事に戻りますが、今度は屋上に残っていた夫人・長男・長女・次男・次女の5人が円盤を目撃。山川が上ってみるともういない。

 平野威馬雄『空飛ぶ円盤のすべて』(高文社)によれば、山川氏はあのハヨピラのUFOピラミッド建設にまで関わっていたというのである。平野氏の本には、

「わたしが始めて(ママ)空飛ぶ円盤と呼ばれている宇宙船を見たのは、昭和三六年の六月である」

 という、山川氏のUFO体験談が紹介されている。山川はもともと円盤に興味があり、実在を確信して『少年エース』という作品内に円盤を登場させたところ、CBAから接触があり、彼らから宇宙人とのテレコン(テレパシー・コンタクトの意)を勧められたという。まず山川夫人が風呂上りに自宅屋上でテレコンをしてみると、果たして円盤がやって来た。だが、家族みんなで屋上へ駆け上ってみると、もう消えている。山川だけ仕事に戻るが、今度は屋上に残っていた夫人・長男・長女・次男・次女の5人が円盤を目撃。だが、呼ばれて山川が上ってみるともう消えている。

 これが繰り返されて、その夜は円盤が7回飛来しましたが、結局山川は円盤を見ることはできませんでした。彼が初めて円盤を目撃したのはその2日後のことです。

ほどなく、乳白色の洗面器ほどの大きさの円盤が幻のように目の前の空をかなりゆっくりと飛んでゆくのを初めて目撃した。

 その夜、円盤は12回飛来したそうです。その後も山川惣治は円盤を何度も目撃します。

あるときはダイダイ色に輝き、青白く輝き、乳白色に見えるときもある。その速度は音速の10倍以上であろう。空を見上げる視界のはじからはじまで、ひゅーっとまっすぐに横切る。または中天から垂直に降下したり、空中で円を描いて飛び去る。

 これが繰り返されて、その夜は円盤が7回飛来したが、結局彼だけは円盤を見ることはできなかった。しかし、その2日後、彼もやっと、円盤の目撃を実現させる。

 乳白色の洗面器ほどの大きさの円盤が幻のように目の前の空をかなりゆっくりと飛んでゆくのを目撃その夜、円盤は12回も飛来したという)して以来、山川は円盤を何度も目撃するようになる。あるときはダイダイ色に輝き、青白く輝き、乳白色に見えるときもあった。その速度は音速の10倍以上であろう。空を見上げる視界のはじからはじまで、ひゅーっとまっすぐに横切る。または中天から垂直に降下したり、空中で円を描いて飛び去ることもあったという。

 山川惣治はCBAの説に沿って、空飛ぶ円盤を以下のように考えていました。

「円盤に乗って飛来する宇宙人は非常に美しい人間」
「発達した遊星の人々は、宇宙連合をつくり、大宇宙船を建造し、それに各遊星の人々がのりこみ、格納庫に円盤をつみこみ、地球の近くの大気圏の宇宙に停滞して地球を観測している」
「すでに戦争という野蛮な時代を終わり、病気もなく、皆長生きで若々しいといわれる宇宙人たちは、宇宙時代にとりのこされた野蛮な星地球を心配して観測している」
「宇宙人たちは地球に愛の手をさしのべ、戦争をやめ、核爆発をやめるよう、地球人と接触しようとつとめている」

 山川自身はCBAの説に沿って、空飛ぶ円盤を以下のように考えていたらしい。

「円盤に乗って飛来する宇宙人は非常に美しい人間」
「発達した遊星の人々は、宇宙連合をつくり、大宇宙船を建造し、それに各遊星の人々がのりこみ、格納庫に円盤をつみこみ、地球の近くの大気圏の宇宙に停滞して地球を観測している」
「すでに戦争という野蛮な時代を終わり、病気もなく、皆長生きで若々しいといわれる宇宙人たちは、宇宙時代にとりのこされた野蛮な星地球を心配して観測している」
「宇宙人たちは地球に愛の手をさしのべ、戦争をやめ、核爆発をやめるよう、地球人と接触しようとつとめている」

「太陽の子 サンナイン」の舞台は、南米、ペゼラ国という架空の国です。国境を越えてブラジルに行ったり、コロンビアに行ったりしてますから、地理的にはベネズエラあたりをモデルにしてるらしい。

 主人公は10歳の美少年、陽一です。 陽一は12歳が近づくにつれ、超人的な力を発揮し始めます。彼の亡くなった母は日本人、そして父親は宇宙人でした(!)。

 ある飢饉の年、空飛ぶ円盤が降りてきて、ヒト型宇宙人であるミリオンが現れました。彼は不思議な力で雨を降らし、先進的な機械を使って農園を作り、人々を助けます。

 ミリオンは日本人移民の娘と結婚し、生まれたのが陽一陽一が誕生したとき、天空に9つの光(=空飛ぶ円盤)があらわれ、これが「サン・ナイン」であります。

『太陽の子サンナイン』は、1967年に、集英社コンパクト・コミックスの一環として、全3巻で発行された作品である。舞台は、南米・ペゼラ国という架空の国モデルはベネズエラであろう。実際、作中で主人公たちは国境を越えてブラジルに行ったり、コロンビアに行ったりしている。

 主人公は10歳の少年、陽一。 陽一は普通の少年だったが、12歳の誕生日が近づくにつれ、超人的な力を発揮し始める。実は彼の死んだ母は日本人、そして父親は宇宙人だったのである。

 12年前の干魃の年、村に空飛ぶ円盤が降りてきて、ミリオンと名乗る宇宙人が現れた。彼は不思議な力で雨を降らし、地球の科学では作れない機械を使って農園を作り、人々を助ける。ミリオンは日本人移民の娘と結婚し、生まれたのが陽一だった。陽一が誕生したとき、天空に9つの太陽(空飛ぶ円盤)が現れた。これがタイトルの“サンナイン”である。

 ミリオンは、インカ帝国の末裔たちの生活のため、インカの宝物を売って資金を得ますが、そのころクーデターでペゼラ国の政権を奪取したゴステロ大統領がこの宝に注目し、ミリオンと陽一の母を殺害してしまいます。

 サンナイン・陽一が、ゴステロ政権に対抗する地下組織や先住民たちと協力して革命に成功するまでが全体のストーリー

 陽一は、アマゾン奥地の忍者の種族(←南米で忍者というのもアレですが、ホントにこういう目撃譚があったのかしら)、タバス族に忍術の訓練を受け、水の上を走ったり、すばやく動いて姿を消したりできるようになります。

 陽一に協力する3人の女の子がいまして、地下組織の美少女・エミリヤ、タバス族のおねえさん忍者・タマラ、タバス族のところで生活している白人美少女忍者・メニヤ。残念ながら、「少年王者」のすい子さんのような色っぽい少女はいません。

 ジャングルの怪獣たち、大蛇のラ・デボール(「少年ケニヤ」のダーナの焼き直し)とか、するときはたいへん楽しい。山川惣治の描く動物の絵はあいかわらずすばらしい。

 さらに陽一は、父親の遺産の超科学を勉強して、空飛ぶマグネチック・カーや地底推進艇を造ります。ただしメカのデザインは、もうひとつかっこよくありません。

 陽一が危機に陥ると円盤が飛んできます。円盤が来ると電気機械はまったく動かなくなりますし、銃も発射できなくなります。ある夜、陽一は円盤に乗って宇宙母船団を訪れ、宇宙連合の惑星首脳者、グレート・マスターに面会します。

 「サンナイン」では、物語を進行させる力として、古典的な親の敵討ちと、政治的革命が同居してます。ただこれだけでは、宇宙人が出てくるような物語のスケールとしてはもうひとつ。そこで世界的陰謀団としてブラック・シンジケートが登場しました。

 ミリオンは、インカ帝国の末裔たちの生活のため、インカの宝物を売って資金を得。しかし、そのころクーデターでペゼラ国の政権を奪取したゴステロ大統領がこの宝に注目し、ミリオンと陽一の母を殺害してしまう。

 サンナイン・陽一は、父譲りの超能力と科学力で、ゴステロ政権に対抗する地下組織や先住民たちと協力して革命を起こし、ゴステロを倒す、というストーリーである。

 ストーリーは絵物語らしく波瀾万丈、と言えば聞こえはいいが行き当たりばったりで、アマゾン奥地に忍者の一族がいたり、したり、少年活劇ものの王道として話が進むかと思うと、突如陽一が円盤に乗って宇宙母船団を訪れ、宇宙連合の惑星首脳者、グレート・マスターに面会するなどという、コンタクト・ストーリィになったりして、話がかなり迷走する。さらに、地球人と宇宙人の提携を邪魔しようとする陰謀団、ブラック・シンジケート(しかしダイレクトな団名である)が登場してくるのである。

 宇宙人の文化が地球にもたらされると、戦争はなくなり、病気はなくなり、人間は神のように気高い人格になる。これを大宇宙主義と言うらしいこれでは戦争で儲けるブラック・シンジケートとしては困ります。そこで、ペゼラ国のゴステロ大統領に資金を提供し、水爆ロケットを建造させ、当時戦争中のベトナムに撃ちこんで第三次世界大戦を起こそうという計画。このあたり007的。

 陽一はグレート・マスターから、ブラック・シンジケートの野望を砕くようにとの指令を受けて、水爆の破壊を見事に成し遂げます。ペゼラ国の革命も成功して大団円。ただしブラック・シンジケートはまだ残っています円盤から声が聞こえます。

「地球はブラックにねらわれている。第三次大戦がおこれば地球はほろびるのだ。おまえの母の国、日本へかえれ! 日本は神にえらばれた国だ、宇宙船の地球への友情をただしく日本の人々にしらせるのだ」

 富士山上空で、ジェット機に乗った陽一を宇宙母船群が迎えるシーンでオシマイ。

 宇宙人の文化が地球にもたらされると、戦争はなくなり、病気もなくなり、人間は神のような存在になる(これを大宇宙主義と言うらしい)。これでは戦争で儲けるブラック・シンジケートは商売あがったりなので、ゴステロ大統領に資金を提供し、水爆ロケットを建造させ、当時戦争中のベトナムに撃ちこんで第三次世界大戦を起こそうという計画を立てる。陽一はグレート・マスターから、ブラック・シンジケートの野望を砕くようにとの指令を受けて、水爆の破壊に見事成功。ペゼラ国の民衆革命も成功するが、ブラック・シンジケートはまだ残っている最後は円盤からのメッセージで、

「地球はブラックにねらわれている。第三次大戦がおこれば地球はほろびるのだ。おまえの母の国、日本へかえれ! 日本は神にえらばれた国だ、宇宙船の地球への友情をただしく日本の人々にしらせるのだ」

 という言葉が伝えられ、その命に従い、ジェット機で日本に向かう陽一を、富士山上空で、宇宙母船群が見守っているというシーンで終わる。

両者の比較

二つの間には類似点が挙げられます。

細かい言葉の使い方や、一部は丸写しではないかと思えるほど類似点が挙げられるのは、当該文章を読み比べれば一目でわかることだと思います。

あくまで盗用ではないと主張

この件について「漫棚通信」主宰者がメールで問い合わせたところ、唐沢俊一氏は日記上で「参考にさせていただいた」旨を記載し、「漫棚通信を参考サイトとして掲載しなかったこと」について謝罪文を掲載しました。また、「当該の記述部分に関しては増刷以降削除または上記の内容を付記させていただき、その旨はネット等で記載する」との今後の対応を示しています。→新刊 5月30日投稿※ご報告(6/5)

しかし、今回の論点は「盗用の疑い」についての話です。この件で唐沢氏は盗用については認めず、「ある作品のストーリィを紹介するという性格上、参考にさせていただいたサイトとの記述の非常な類似のあることも事実です」と、要約とは性質上、類似するものであると書いています。「盗用ではないか」という問いに対して「盗用ではない」と返答したと解釈してよいでしょう。それにしては当該箇所は次以降削るかも、という一貫しない姿勢を見せているのが疑問です。

追記:状況(06/06)

「漫棚通信」主宰者、唐沢俊一氏、そして幻冬舎間でのメールによる話し合いが行われ、これ以降は当事者間の話し合いが終わるまで表には目立った動きはないと思われます。特に大きな出来事がない限り、本件についての更新は、事態が収拾した後にまとめるのみとします。

蛇足ですが「漫棚通信」の更新タイトルはまるで「猿の惑星」のようですね。「続」「新」「征服」「最後の」までは続くでしょう(リメイク版もあるかもしれません)。

追記:検索結果から(06/08)

06/07の読売新聞の地方版?でこの問題が取り上げられたようです。

「唐沢俊一+盗作」で検索してこのページにたどり着く方が多いようです。その際、Google検索結果ページ(唐沢俊一 盗作 - Google 検索)の一番下の注意書きに、「Google 宛に送られた法的要請に応じ、このページから 1 件の検索結果を除外しました。ご希望の場合は、ChillingEffects.org を除外するに至ったクレームを確認できます。」という一文がありました。

追記:状況(06/11)

唐沢氏のサイトによると、漫棚通信主宰者との連絡は幻冬舎を通しての一本に絞るそうです。執筆者と出版社の細かい意見のズレを無くすために、これはよくある対応だと思います。

追記:状況(06/14)

6月14日発売の『週刊新潮』(6月21日創刊2600号記念特大号)に「朝日新聞「書評委員」に浮上した「ブログ盗用疑惑」」という記事が掲載されていました。「無断引用」したことについては全面的に認めている、「漫棚通信」さんには会って謝りたい、という内容です。書籍の当該箇所は書き直す予定があるようです。

言葉を正確に使うならば「無断転載」だと思われます。「引用」は必要条件を押さえていれば無断で行って構いません。今回のケースは「引用」の必要条件を押さえていない(主従関係がない、引用元が書かれていない、など)ので「盗用」と言われています。

追記:状況(07/12)

発覚から一ヶ月以上経ちましたが、漫棚通信の最新エントリによれば、大した進展は無いようです。現在の状況のご報告(6/25)(ページ下部)によると「話し合いは最終的な詰めの段階に入っております」とのことだったので、7月に入ると落ち着くのだと思っていましたが、双方の説明が食い違っているような印象があります。

また、漫棚通信の最新エントリによれば、著者名・出版社名を伏字にするよう要請されたそうです。検索エンジンで直接ひっかからないようにするためだと思われます。(追記:この要望は取り下げられたそうです)

追記:状況(07/28)

交渉は決裂したそうです。

追記:状況(08/01)

唐沢氏のサイトに「『新・UFO入門』 交渉の経緯について」という文章が掲載されました。どのような経緯でこのような事態になったのか説明されています。それを受けて漫棚通信ブログ版にもこれは盗作とちゃうんかいっ・解脱篇という文章がアップされました。

『月刊WILL』2007年9月号のいしかわじゅん氏の連載でこの件について触れられているそうです。まだ確認していません。

追記:状況(08/03)

唐沢氏のサイトに謝罪文が掲載されました。

追記:状況(12/23)

藤岡真氏のサイトにもありますが、『社会派くんがゆく! 復活編』(著:村崎百郎/唐沢俊一)にこの件について掲載されています。ネットの人達はすぐに謝罪したから怒りの持って行き先がなくなって困ったようだ、など。果たしてそうだったかな?と疑問が残りますが、詳細は書籍で確認してください。

参考:要約の著作権

今回の争点とは違いますが、そもそもストーリーを要約して紹介することは著作権上はどうなるのでしょうか。実は「要約」は「引用」とは違い、著作者に事前に許可を取る必要があります。以下に「原作品を読まなくても内容が分かるような要約は、著作権法上の「翻案」に当たる」「合法的に認められるのは、著作物自体の存在だけを紹介するごく短い要旨程度のものに限られる」と解説されています。「翻案+要約+著作権」で検索して事例を探すのもいいでしょう。

しかし実際には、要約をしたことで訴えられたという事件はほとんど知りません(海外サイトの記事を翻訳・要約して配信したことで訴えられた会社があります)。ただ、これは認められているのではなく、きりがないのであえて見逃されているか、著作権者が単にその事実を知らないか、という曖昧なものです。今回の件について言えば、両者とも要約して紹介という形をとっていますから、著作権上はグレーな部分での出来事といえます。

ただ、ワタシはこういった誰もが忘れていた・知らなかった物事について、興味を抱かせるべく紹介する行為が、新たな需要を生みこそすれ、誰かの権利を侵害するとは思えません。価値がなくなったと思われたものに価値を再び与える行為自体は良いことだと思っています。今回の件は誰かの行為に対する敬意を欠いたマナーの話です。

参考リンク


お問い合わせはばるぼらまで。